ジャンバルジャンはなぜ追われたか?

 ▼…映画「レ・ミゼラブル」で市長となったジャンバルジャンの住むまちは、小さな工場があるだけの片田舎として描かれた。今でもフランスのかしこで見かける風景だ。革命当時にはそんな村が全国に4万近くもあり、200年以上経った現在も変わりない。平均人口は札幌近郊の赤井川村ほどの約1500人。

 ▼…日本の場合は、1世紀前に約7万2千の市町村があった。百戸以下の村が7割近く占めたというから、フランスの比ではない。しかし、政府の号令で合併が進み、現在は3252まで減った。「平成の大合併」では、千とか500とかにするといった議論も巻き起こっている。

 ▼…「行財政の効率化・住民サービスの向上」という考えに立てば、フランスでも合併論が噴出しておかしくない。なぜか。その源流は、パリへの中央集権と全国画一化という革命後の国家理念にたどりつく。公共的なサービスは、中央の出先機関や県、広域連合体などに任され、市町村は補佐役に過ぎない。

 ▼…フランスに暮らした経験のある友人は、別の解説をする。国会議員の大半が市町村長を兼ねており、自らの足元を揺るがすような、兼任の制限や市町村合併には消極的なのだ、と。日本でも首長や議員がポスト削減につながる合併を煙たがる。「名誉職指向」という点では、共通している。ジャンバルジャンを追う刑事ジャベールの執拗さは、名誉保持と官の支配から来ていたのかも知れない。

(6.Oct.2000 梶田博昭)