「なまこ」は見た目じゃない

 ▼…静岡県の松崎町で、早大建築科の学生と役場、地元住民によるまちづくりワークショップが展開されている。「古建築再生」で多くの実績を持つ石山修武教授の指導で、白と黒の市松模様の壁の家屋が連なる「なまこ壁通り」を中心に土蔵の再生と合わせて町全体を美術館にしようという構想だ。

 ▼…なまこ壁は、壁面に四角く平らな瓦を張り、つなぎ目を白漆喰で固めた江戸期以降の伝統的な建築技術。盛り上がった漆喰の形がナマコに似ているのが名の由来という。開拓期に洋風建築を直輸入した歴史と本州に比べ乾燥した風土から北海道にはなじみが薄いけれど、最近再び注目を浴びている。

 ▼…日本建築の見直しや全国の街並み保存運動の活発化がなまこ壁復権のきかっけだが、現代にも通用する保温・防湿・防虫・防火の機能とデザイン性が背景にある。アルミ製のなまこ壁デザインを採用した大阪・守口市の美術館は、和洋混同。「かた(型=外見)」に「ち(血=機能)」が通って出来上がった「形」がなまこ壁であり、だからこそそこに「価値」があるのではないか。

 ▼…「箱物行政」に冷たい視線が注がれる昨今だが、住民の希望や夢を実現するための血が通った箱づくり・まちづくりはやはり必要だし、古びていても生きている建造物は文化遺産以上に大切にすべきだと思う。松崎町民と学生たちが、まちにどんな息を吹き込むのか、楽しみだ。

(17.Nov.2000 梶田博昭)