リテラリー誌のリテラシー

 ▼…米国の大統領選挙でマスコミの予測が外れて話題になったが、1936年には「リテラリー・ダイジェスト」という雑誌が大失態を演じた。購読者と電話所有者1千万人の調査から共和党候補の圧勝を予測したのだが、実際には民主党のルーズベルトが60.8%の得票率で勝ってしまったのだ。

 ▼…調査対象として、前回選挙で結果を正確に予測した人をリストアップしたのにもかかわらず、見事に外れた原因は、興味を持って調べたある学生の卒業論文で解明された。何のことはない。当時、電話を所有し、この雑誌を購読できたのは経済的に恵まれた人たちで、サンプルそのものが共和党支持者に片寄っていたのだった。

 ▼…選挙予測といえば、一昔前までは記者の足とカンピュータが頼りだったが、今は出口調査とコンピュータが精度を高めている。しかし、それでもなお誤差が紛れる可能性はゼロではない。むしろコンピュータと情報氾濫の時代だからこそ一人ひとりの「情報リテラシー(認識能力)」が求められている。

 ▼…もう一つ、情報・調査の危うさを示す本当にあった話を紹介しよう。かつて某巨大国がある地域で人口調査をやったところ、2800万人の人口が5年後に1億500万人に増えていた。実際にはどちらも誤った数字で、原因は住民に知らされた調査目的にあった。最初は「課税と徴兵」、2回目は「飢餓救済」が目的だった。

(24.Nov.2000 梶田博昭)