「厄介者」の言い分も聞いてみよう

 ▼…家畜のふん尿を発酵させると、燃焼可能なガスが発生する。戦後間もなく日本でも農家の自給燃料として活用されたが、最近再び注目を浴びている。湧別町では大型のバイオガスプラントが完成し、ニュースでも取り上げられた。垂れ流しによる環境汚染が深刻化している本道の酪農地帯にとっては、一石二鳥の新技術といえそうだ。  

▼…自動車燃料としての活用も研究されているが、発酵後に残る消化液の処理が難問なのだという。堆肥とともに畑に還元できれば、土が活性化することで飼料作物が育ち、牛の餌となる。有機物が循環する過程で牛乳や肉が生産されるわけだが、北海道には堆肥さえ行き場がない現実がある。  

▼…発生、還元のサイクルが絶ち切られているのは、家畜用の飼料を輸入に頼っていることに起因する。「北海道に酪農業はない。あるのは搾乳業だけだ」との警句も、そんな実態を指している。また、ある研究者は「牛乳2百ミリリットルの裏に2倍の量の厄介者が存在していることを知らなければならない」という。  

▼…自然の恵みを享受する一方で、自然に対して深刻なダメージを与えていた。「生産者が考えればいいこと」と割り切ってはいられない問題ではないだろうか。リサイクルの優等生とされるペットボトルが増産される一方で、回収がいっこうに進まない構図ともよく似ている。「循環型社会」など幻想のようにも思えてくる。    

(2.Mar,2001 梶田博昭)