過激なネーミングの条例

 ▼…田中康夫長野県知事の「脱ダム宣言」が何かと話題を呼んでいるが、脱ダムの元祖は、徳島県木頭(きとう)村の藤田恵村長かも知れない。初当選した93年に「ダム建設阻止条例」を提案、議会の賛成多数を得て制定した。その断固たる反対姿勢に、国もダム建設計画を事実上断念せざるを得なかった。

 ▼…それにしても「阻止条例」とは過激なネーミングだが、実はこのとき藤田村長はもう一本条例案を上程していた。「ふるさとの緑と清流を守る環境基本条例」。豊かな環境の中で暮らす村民の権利が基本に据えられていた。住民は、地元にカネを落とす大型公共事業よりも、緑と清流がもたらす恵みの方を選んだわけだ。

 ▼…その「緑と清流」をもっと積極的に生かそうという試みも進められている。養魚場の排水を利用した小規模水力発電や、間伐材を燃やした熱源を公共施設や住宅の暖房用温水として活用する計画だ。室蘭工大の丸山博教授や四国電力の関係者らの協力で策定された「新エネルギービジョン」は、新年度から具体的な事業に着手する。

 ▼…計画では太陽光・風力発電と昔ながらの生活体験を組み合わせた環境教育や観光へと発展させていくという。かつて「阿波のチベット」と呼ばれた村は、総面積の98%を占める森と那賀川の源流を生かして、「したたかでしなやかな戦略」を練る。そう、このキャッチフレーズの元祖でもあった。

(16.Mar,2001 梶田博昭)