住民が○×△を付けるとき

 ▼…「ケセン語」をご存知だろうか。岩手県と宮城県にまたがる気仙地方に限って使われる言語で、家庭向けの国語辞典より分厚い大辞典もある。辞典の編纂者で、大船渡市に住む山浦玄嗣医師の診察室の入り口には「こっからながさヘァらっせん」と書かれている。そのケセン語圏で、共和国建設か独立かで熱い議論が巻き起こっている。

 ▼…三陸町では、大船渡市との合併に積極的な町長が、事務レベルの合同検討会設置を議会に提案した。これに対し、慎重派は町長の任期満了前の合併について可否を問う住民投票条例案を提出。結局、8対11の反対多数で条例案は否決され、検討会は設置された。

 ▼…慎重派の論拠は、秋に行われる町長、町議選挙で合併問題を争点として住民の判断を仰ぐべき、という考えに基づく。その背景には、論議不足と町長の「強過ぎるリーダーシップ」に対する警戒感が見え隠れする。しかし、合併が住民の間で十分語られていない状況下で、いきなり住民に○×判定を求める考えにも無理があるように思う。

  ▼…先日告示された新潟県刈羽村のプルサーマル計画をめぐる住民投票では、○×のほか△(保留)も選択肢とされた。恐らく△の得票率が、投票率とともに問題に対する住民の理解度を示すのではないか。合併問題で最終的に決断するのは住民だが、その前段においては、形式的ではなく、腹を割ってのケセン語による議論が重要だろう。

 (21.May,2001 梶田博昭