▼…「君らの暮らしは、アリと同じだね。僕の所にちょっと来てくれたまえ。なんでも思いのままだよ」。「アリ」と呼ばれたネズミは、都会を羨ましく思った―。そんなイソップの寓話を、小泉内閣のタウンミーティングのライブ中継を見ながら連想した。確かに「アリのまち」にだって、都市並みの下水道は欲しいし、高速道路もあれば便利だ。

  ▼…改革論議の矛先が地方に向けられがちな中で、地方の不安は増幅している。対話集会が陳情の場になりがちなのも致し方ないか。「長野県がダム事業を返上するなら、その分を我が町に」。ある首長は、予算獲得合戦と「地域間競争」の区別を付けかねている。「改革の痛み」が何なのか、確かに地方には戸惑いの色を見て取れる。

  ▼…鹿児島集会では、石原伸晃行革担当相が「必要なもの、いらないものをはっきり言わないと、『都市対地方』の構図になってしまう」と冷静な議論を求める一幕もあった。確かにその通りだ。対立の果ては「田舎がいやなら都会に集まれ」ということになりかねない。

  ▼…「麦をかじっていても、田舎暮らしをやっていきたいと思うんだよ」。寓話の結末は、そんな田舎のネズミの言葉で終わる。しかし、イソップは都会と田舎の善し悪しではなく、その土地に住む者の生き方・選択を問いかけているのだと思う。地域のあり方・生き方を明確にできるマチにとって、小泉改革はチャンスでもある。

 (18.Jun,2001 梶田博昭)