地ビールに見るポピュリズム

 ▼…本州某県に住む悪友が、地ビールを送って寄こした。私が夕張の出身であることを知っているから、茶色の瓶に込められた彼のメッセージは、おおよそ想像がついた。さらりとした辛口で、しっかりと熟成されている。なかなかに、美味い。(ただし、ブランド名は特に伏せることにする)

  ▼…地ビール製造が解禁になったのは94年。爆発的なブームを呼び、今や全国地ビール醸造者協議会の加盟だけで160社余に上る。文字通り泡立つ勢いを見せたが、このところ陰りも見せ始めた。北海道では岩見沢市のメーカーが撤退、遠軽町の第三セクターは累積赤字の増大に苦吟している。

  ▼…全国的にも地ビールをまちおこし・産業振興策として推進した自治体が多いから、リゾートブーム破綻の二の舞を踏みかねない危うさを感じさせる。ブーム衰退の裏には、どうやら個性追求から顧客ニーズ重視にシフトしたことがありそうだ。拡販を追求する余り、いつの間にか「○○ドライ」や発泡ビールを敵に回していたのではないか。

  ▼…某県のブランドも、かつて地元で飲んだのは、甘口でコクのあるベルギー風のヴァイツェンが売りだった。美味くはないが、その「出会い」は有り難い味だった。オホーツクビールの創業者は「ともかく北見でおいしいビールを造って飲みたかっただけ」と言った。再生のカギは大衆迎合ではなく、こだわりの原点にありそうだ。

 (2.Jul,2001 梶田博昭)