那須野原台地に咲くラベンダー

 ▼…那須塩原から東京まで新幹線で小一時間。わずかに色づき始めた高原の麓には、ゆったりとした大地が広がる。「遠過ぎず、近過ぎず」。車窓の景色を眺めているうちに、栃木県が推進する新首都構想のキャッチフレーズに納得させられた。「最小のコスト、最小の環境負荷による首都機能移転を」という看板にも、なるほど説得力がある。

  ▼…都市に近い農村だからこそ、自然や環境を大切にしてきたという。県中央の矢板市の肥料会社では、下水道汚泥と食品残さ、建築廃材を原料に、有機肥料を生産している。月に1200トンの廃棄物を(お金をもらって!)受け入れ、残るのは有用資源だけ。肥料は地元農家や園芸愛好家らに重宝がられ、見事に循環のサイクルが成り立っている。

  ▼…工場の敷地内で社長さんも家庭(?)菜園を楽しんでいた。ジャガ芋などは年に2回収穫できるという。周辺の住民が加わり、漬物会社の協力で、有機栽培の「安沢菜」を使った特産品まで誕生した。関東地方では育たないとされてきたラベンダーも、この肥料が有効と分かり、新たな観光資源になろうとしている。

  ▼…資源の循環と産業クラスター発展のモデルを発見したのは、旅の収穫だが、社長さんからこんな話も聞いた。肥料の原料になる下水道汚泥は、小規模な村の処理場のものに限られ、都市部の下水道汚泥は、重金属など有害物が含まれ適しないのだと。循環の輪はつながれる一方で、断ち切られてもいる。

 (15.Oct,2001 梶田博昭)