「瀬戸際の花嫁」

 ▼…日本三景の一つで、世界遺産の厳島神社でも知られる広島県・宮島町が、市町村合併問題で大揺れに揺れている。お見合いの一方の候補は広島市。片や広島市の西部に広がる廿日市市など。町内は概ねこの2派に分かれている。12月町議会では、町長の不信任決議案がわずか1票差で否決される事態にまでもつれ込んでしまった。

 ▼…この間、廿日市市側が「合併できたら宮島市でも構わない」とラブコールを送る場面もあった。7万人の都市が2千人余りの町に焦がれるのは、観光や企業誘致などの面で「宮島」のネームバリューに魅力を抱いてのこと。一方、町民にとって大都市・広島との一体化も捨てがたい、ということらしい。

 ▼…一見贅沢な婿選びに見えるが、宮島町は経常収支比率が128.3%(99年度決算)と全国最悪。歳出を削っても財源不足は埋まらず、10年ぶりに「財政再建団体」の汚名を返上する福岡県赤池町に取って代わりかねない状況に置かれている。そのためか合併論議も、苦し紛れの一策として論じられている観が否めない。

 ▼…広域合併は、財政的に追い詰められた自治体の「駆け込み寺」としての一面も持っている。しかし「損得勘定」が極まれば、やがて無為無策のまちに対して周辺のまちが門を閉ざす現象も起きてくる。損得も大事だが、まちの未来をどうするか、これが肝心。せめて厳島神社ゆかりの毛利元就の「三本の矢」の教えにならいたい。

   (17.Dec,2001 梶田博昭)