21世紀版ダイマクション・マップ

 ▼…東京・神宮前のワタリウム美術館で、バックミンスター・フラー展が開催されている。米国の建築家フラー(1895-1983年)は、作家、詩人、数学者、哲学者であり、振付師でもあった。ドーム建築や車の流線型のデザインなどに鬼才ぶりを発揮し「現代のダビンチ」と呼ばれた。

 ▼…哲学者としての一面は、「ダイマクション・マップ」(1944年)という世界地図に象徴されている。地球表面を複数の三角形に分割し、平面に広げたもので、大陸が全てつながり合っている。国家主義の対立から汎地球主義へ。著書「宇宙船地球号」に込めた人類の未来へのメッセージが、その地図から伝わってくる。

 ▼…敵と味方の対立の構図に立った「ゲーム理論」に対して、フラーの「ワールドゲーム」には敗者がいない。かつて戦争というゲームだけに適用された世界地図を使って、全地球の問題を解決しようという発想だ。究極の楽天主義にも見えて、現実の危うさを衝いているのがすごい。

 ▼… 新世紀冒頭のテロ・アフガン問題は、過去の大戦とは別の形で、対立と敗者が厳然と存在することを浮き彫りにした。そんな6人の大富豪と栄養失調の50人が住む「百人村の話」が、地球問題解決の道具とフラーの予言したコンピュータを介して彼のマップ上を駆け回っているのは、何かの巡り合わせだろうか。

(4.Feb,2002 梶田博昭)