馬鈴薯も、いんでないかい?

 ▼…「県民性の日本地図」という本の中で、歴史学者の武光誠さんが、北海道人気質をこんな風に書いている。各地からの移住者が多いから調和を保つために「細かいことや面倒なことは言わない」。そして、因習にとらわれない「新しもの好き」。だから口癖は(人なつっこい笑顔で)「いんでないかい?」。

 ▼…なるほど、こんな具合か。大規模工業基地で産業振興を〜「いんでないかい?」。リゾート開発で町を元気に〜「いんでないかい?」。試される大地、独立を目指せ〜「いんでないかい?」。高速道路建設と領土問題はこのムネオにお任せを〜「いんでないかい?」。

 ▼…確かに、悪いこっちゃない。北海道にはそうした夢を実現し得る素地もある。高い航空運賃に風穴を空け、北海道経済活性化の起爆剤に〜と叫んだエア・ドゥの理念もまた、「いんでないかい?」と言えるが、高邁な理想がこうも簡単にはじけ、崩れ去るのはどうしたことか。

 ▼…北海道に理想を求めた国木田独歩の小説「牛肉と馬鈴薯」の一節を思い起こした。夢破れた青年にひげの紳士が語る。「ビフテキに馬鈴薯は付き物なんだよ」。青年「そう。理想は則ち実際の付属物なんだ」。夢は自分自身で見るもので、現実を踏んまえないと実現は難しい。「いんでないかい?」は他人事だから言える。

(1Jul,2002 梶田博昭)