もっと北の国から

 ▼…札幌から車で1時間ほどの余市町に、知人のリンゴ農家を訪ねた。数年前までは都会に行商に出たが、「最近は皆さんの方から来てくれる」という。なるほど、選果所の壁に張られた無数の写真には、訪問者のにこやかな顔が並んでいる。週末ごとにやって来ては、「援農」を楽しんでいく熟年夫婦もいるそうだ。

 ▼…観光農園でもなく、HPでPRしているわけでもないのに、なぜか都会から人が集まって来る。「鉄腕ダッシュ村」や津軽じょんから、狂言人気ともつながった現象なのか。東京の若者らが、口コミで里山に押し寄せた2年前の「越後妻有アートトリエンナーレ」も思い起こす。

 ▼…そんな土臭さを求める古里指向を背景に、オホーツク沿岸12市町村が「DOいなか博」の開催を計画している。博覧会といっても、パビリオンが並ぶわけではない。地域の文化や産業を掘り起こし、連携させることで「田舎」の魅力を引き出し、圏域の外へ、道外、世界に向けて情報発信することを目指している。

 ▼…成功のカギは、住民自身がその魅力や価値、潜在資源にどれだけ気付いているか。宝があると分かれば、後はどう生かすかの問題に過ぎないと思う。リンゴ農家の主人は「後継者が難問」とこぼすが、若い世代が地域や農業の新しい可能性に光を当ててくれることを期待する。

(11.Nov,2002 梶田博昭)