選挙公約を買って読む?!

 ▼…マニフェストは元々、船荷を確実に届けるための伝票を指した。日本では、病院から排出された注射針などの医療廃棄物の収集・運搬・処分を確実にする方法として、マニフェスト方式が採られている。ただし、処理費用がかさむゴミだけに、医療機関や業者間の談合による偽造や不法投棄も横行しているという。

 ▼…北川正恭・三重県知事が提唱するマニフェスト(政策綱領)も、考え方は同じ。単にバラ色の公約を掲げるだけでなく、具体的な目標や実現のための手法、財源、期限を明示する、有権者との約束なのだ。目標と同時にプロセスも明らかだから、有権者の政治参加を促す効果もある。

 ▼…しかし、統一地方選の前半戦を見る限り、マニフェストを掲げる候補は、極々少数にとどまっている。三割自治の現実を考えると、財源まで明示するのは難しいとは思うが、ブレア政権の足場を築いた英国労働党のマニフェストが500万部も売れたのと対比すると、ちょいと寂しくはないか。

 ▼…それでなくとも、無党派候補が横一線で、きれい事を並べられると、○×△の付けようもない。マニフェストの語源は「手で触れられる」という意味だそうだが、愛想笑いの握手戦術なら、意味をはき違えている。候補者が増えて賑やかになっても、投票率はさほど上がるまい。

(31.Mar,2003 梶田博昭)