ニュースの現場

 ▼…新聞編集の現場に「分からん3段」という隠語がある。紙面をレイアウトする際、「大事そうだが、それで世の中どう変わるのよ?」といった記事。整理記者の判断能力を超えるようなケースでは、大見出しでもベタ(1段)でもない、3段見出しが「無難な扱い」となる。

 ▼…朝日新聞が拉致被害者曽我ひとみさんに謝罪した家族の住所報道も、手元の14版では3段見出し。記事の要素は平壌の地番だけだから、ニュース価値をめぐりデスクの間では論議があったんだろう。結果「分からん3段」かと思っていたら、朝日の内部調査では、ニュース性の論議もほとんどなく紙面化されたという。

 ▼…プライバシー保護以前の問題として、報道の現場でも情報とデータの区分が曖昧になっているのではないか。封書に記された差出人の住所は、明らかに他と識別できるデータではあるが、それだけでしかない。「今日の佐渡は気圧900ヘクトパスカルだ」と伝えながら、実際どんな天気か分からぬ気象情報と同じだ。

 ▼…せめて気圧の測定法を知りたいものだが、都合の悪いデータは大概は表に出ない。情報化社会の現実は、膨大な量のデータの氾濫・垂れ流し社会でもある。寄せ集め・つなぎ、切り離し・捨てる。データを情報に変換し、知識・知恵へと高める力が、一人ひとりに求められている。

(2.Jun,2003 梶田博昭)