永田町は禿げ山ばかり

 ▼…社会保険庁によると、国民年金保険料の納付率(2002年度)トップは、長野県根羽(ねば)村と福島県檜枝岐(ひのえまた)村の97.4%。市町村全体の平均は62.8%に過ぎない。議員年金だけで国民年金の給付額がざっと10倍という「永田町」の超低納付率と比べるべくもないが、この差はいったいどこから来るのだろうか?

 ▼…人口が千人前後、互いの目も気になるし、都会に比べると行政の声も行き届く。意地悪くいうとオカミに従順なのか。まあ、そんな一面もあろうが、2つの村には、険しい山間地で人々が寄り添うように暮らしてきた、という共通点がある。林業を支えにしてきた点も良く似ている。

 ▼…愛知側から根羽村を訪ねると、県境までは散見された棚田も姿を消し、狭い山道が続く。幹周りが14メートルという杉の巨木もすごいが、全世帯が森林組合員で、1戸平均5ha以上の森を持っているというのにも驚かされる。しかも、大半が伐採による収益のためではなく、矢作(やはぎ)川の水源を守るために育てているのだ。

 ▼…30年50年かける森づくりは、己の将来というより子孫のため。同時に、下流域の人々のためでもある。考えてみれば、年金制度は森づくりそのものではないか。2つの村のナゾが解ける一方で、時空を超えて人々を思う心を欠いたセンセイに、改革を望むなど無理に思えてきた。

(31.May,2004 梶田博昭)