東北発の世界ブランド

 ▼…福島県喜多方市内の旧家の蔵から数万枚もの「染め型紙」が見つかった。「染め型紙」は、絵柄を彫り込んだ和紙で、布の模様を染める際に使われる。世界的にも珍しい染色技法で、江戸から明治にかけての着物文化を華麗に彩ってきた。しかし、西洋技術の導入などで、型紙そのものは半世紀も前に姿を消していた。

 ▼…型紙は元々、伊勢白子(三重県鈴鹿市)を本場とする紀州藩の専売特許で、デザイン性に優れたブランド商品だった。職人や技術は地方にも流出したが、喜多方で大量の型紙が発見されたことから、ここが白子にも匹敵する一大生産地だったのではないか、と推測されている。

 ▼…伊勢白子が花や扇をモチーフに雅びな印象なのに対し、喜多方の「会津型」は素朴な味わい。アケビや桐、竹の子、コウモリ、雪景色など郷土色の強いデザインが多用されている。京を市場とし伝統重視の白子に反し、庶民のニーズに応じて自由に商品開発を進めたことが独自の文化を育て上げたと想像できる。

 ▼…商圏は東北から北海道へも広がっていたと聞くと、博物館に眠らせているだけではもったいない。コンピュータではまねのできないその精緻な芸術性は、世界的にも通用するのではないか。保存にとどまらず再生・活用に乗り出した住民グループの新たな挑戦に期待したい。

(2.Aug,2004 梶田博昭)