明治18（1885）年の開学以来、独自の校風を築いてきた北海学園（札幌市）ゆかりの人々の素顔と足跡、あるいは各界各分野でチャレンジする姿を「百折不撓物語」のタイトルで一冊の本に集大成しました。

　■独自の学風・多彩な人材

　北海学園は、北海道の私学教育の最先端を歩み続け、現在、北海高、北海学園札幌高（旧・札商）、北海学園大学などを擁する総合学園となっています。百折不撓のパイオニア精神をバックボーンに、陸上金メダリストの南部忠平やがん治療で文化勲章の黒川利雄、天才思想家・野呂栄太郎、作家の子母沢寛、彫刻家の本郷新ら多彩な人材を輩出する一方、戦前戦後を通じて甲子園の名門強豪チームとして全国の野球ファンを沸かせてきました。

　■青春の群像に焦点

　登場人物は、これらの異才のほか、映画「七人の侍」を支えた俳優・千秋実と作曲家・早坂文雄や、歌謡漫談「あきれたぼういず」の坊屋三郎、益田喜頓らの個性的な面々。さらには、似鳥昭雄ニトリ社長や水元尚也オホーツクビール社長、佐藤のりゆきキャスターら各界の一線で活躍するＯＢら合わせて92人に上ります。物語は、彼らの奔放で型破りな、ときに苦悩と挫折を織り交ぜた青春時代に焦点を当てながら、その後の生きざまを描き出していきます。

　■野呂栄太郎19歳の記事復刻

　全体が6章96話の構成で、そこからは生々しい人間ドラマとともに、それぞれの時代や社会のにおいも伝わってきます。また、大正9（1920）年に野呂栄太郎（当時19歳）が校内誌に綴った漢文調の記事を復刻収録したほか、明治から終戦直後にかけての札幌の教育事情に関する資料も盛り込み、これまであまり明らかにされてこなかった戦時下の生徒・教師らの実像などを浮き彫りにしています。

　■北海野球の原点に迫る

　明治20（1887）年に始まる北海中学野球部の草創期、屈辱と栄光のドラマの舞台裏、戦争が落とした影、スキャンダルから北海魂の再生へ。九人の選手・指導者の素顔と詳細データを基に、「飛沢（栄三）野球」の神髄と「百折不撓」の原点に迫る内容となっています。

書評・新刊書紹介記事（抜粋）