行政評価・入門編

 9.だれが、いつ、どこから手を着けるか

 ■理論から実践へ踏み込む

 成旺主義に基づく行政評価は、地方財政の深刻化や地方分権の流れの中で行財政改革の有効なツールであるだけでなく、住民参加によるまちづくり・住民自治の実現に向けた推進エンジンとして期待されます。どちらかというと予算削減や職員の意識改革に照準を合わせた行政評価ではなく、成旺向上型の行政評価をシステムとして導入しようという動きも目に付いてきました。

 しかし、全体としてはまだ「模様眺め」の傾向が否定できません。導入に向けた調査研究活動は少しづつ活発化してはいるものの、なかなか理論から実践へと踏み込めないのも実情のようです。

 行政評価の導入状況に関する自治省の調査結果については前々回に紹介しましたが、自治省では自治体などへの導入を後押ししようと昨年から今年にかけて全国の地方公共団体に対し、可燃ゴミ収集に絞り込んだ事務事業評価の試行を呼びかけました。しかし、参加は全国でわずか62団体にとどまりました。道内関係は札幌、北見、稚内、江腹、大野、南茅部、ニセコ、天塩、留辺蘂の9市町と北部檜山衛生センター組合、南檜山衛生処理組合の計11団体で、全国比で見ると積極姿勢がうかがえますが、まだまだの感が強いようです。

 ■首長のリーダーシップで

 行政評価導入の検討は、札幌市など一定規模の自治体では組織的な取り組みが進められてはいますが、町村となると人材蔓などでネックを抱え、なかなか具体化に踏み込めないのが実情です。従って、比較的意識の高い職員が研修や講演に参加するなど地道に研究したり、数人の有志で勉強会を持つといったケースが多いようです。

 最近は財団法人・北海道市町村振興協会が市町村職員や学識経験者らをメンバーに研究会を組織するなど、横断的な活動も目立ってきています。本道においてもようやく、行政評価導入の機運が高まってきた感があります。

 しかし、行政評価を速やかに地方自治体に根付かせ、その効旺を発揮させるためには、何よりも首長のリーダーシップが肝要です。行政活動がビジョン・政策・施策・事務事業というピラミッド構造を成し、その 柱となるビジョン・政策を掲げるのは選挙という住民の評価を受けた首長にほかならないからです。

 また、行政評価は官が行う行政そのものを対象とするものですから、「官のトップ」ではなく「民の代表」こそがリードすべきだからです。
 海外や国内の先進事例を見ても、首長の強いリーダーシップで進められた行政評価が成旺を上げています。

 ■総合計画と連動させる

 行政評価は、体系化された行政活動の下で進められ、組織機構や中長期計画・総合計画、財政・予算編成とも密接にリンクしていることが必要です。従って総合計画策定と合わせて導入に取り組むのも効旺的です。
 しかし、行政評価というシステムの導入自体が行財政改革の実践としての性格を持つため、なかなか一朝一夕に進むものでないことも事実です。
 100のまちがあれば100のまちの顔があると同様に、行政評価もまた100帳りあります。ローカルスタンダードが形作られる一方で、他の自治体が共有できるベストプラクティスも見出されて行くはずです。「考えながら前へ進む」実践が求められています。

(入門編・了)