電子自治体と住民参加(下) 

 「住民参加の道具としての視点を」

2002/05/13
(オンラインプレス「NEXT212」79号掲載)

 

 電子自治体の取り組みが比較的先行している神奈川県横須賀市の場合は、市役所内の「情報の共有化」をキーワードに、まず公文書のデジタル化と管理システムの整備が進められました。文書の作成から保存にとどまらず、全文検索など高度な機能を持ち、起案・決済などの日常的な業務の効率化が図られています。

 ■新しいコミュニティづくり目指して

  この結果、年間約1億円の人件費削減と約140万枚の紙の節減効果を上げています。また、意思決定の迅速化など行政の質の改善についても、一定の成果が期待されています。 電子自治体構想では、こうした行政内部の業務の効率化から、さらに進んで、行政サービスの高度化をも視野に入れています。「電子政府に関する国民の意識調査」でも、「各種申請・届出」「相談・問い合わせ」「行政情報データサービス提供」などのサービスに高い期待が寄せられました。

 しかし、電子自治体構想が、行政の効率化・住民サービスの利便性向上を大きな柱とする一方で、「情報の共有化」に象徴されるネットワークの基本的な特性・機能を、新しいコミュニティの形成につなげていこうとする視点がやや乏しいようにも見えます。言葉を変えると、官から民への上意下達を効率化するのではなく、官と民が相互に情報を受発信する「双方向性」を生かした、ネットワークの活用をもっと前面に出すべきではないでしょうか。

 ■ネットワークの「双方向性」を生かす

  この点について、総務省の推進プログラムでは、インターネットを利用した新しい市民参加システムの構築に取り組む神奈川県藤沢市の例を紹介しています。市民から公募した委員による市民電子会議室の設置や、市民同士あるいは市民と行政との自由な意見交換を支えるネットワーク上のフォーラムなどは、本来の住民自治の実現につなげる積極的な試みであり、電子自治体の一つのモデルを提示していると言えます。

 単に便利で効率的なシステムにとどまらず、行政による説明責任を果たし、住民意思を反映させるための道具としてITを活用することが、実は重要なのではないか。現在多くの自治体が運営しているホームページを見ても、一方通行型の情報が目立ち、住民が本当に知りたい情報とのギャップが見受けられるだけに、残念な気がします。 

 また、住民参加型のまちづくりにITを活用することは、国の電子自治体構想の推進を待たずとも自治体・住民の意識次第で可能なことでもあるのですが…。

グラフは地方公共団体のホームページ開設数の推移(総務省資料から)

 

 

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