来るか 地域主権時代〜藤沢町に見た住民自治の姿

【4.ミニ開発計画】

地域メディア研究所代表 梶田博昭

2002/09/24
(オンラインプレス「NEXT212」95号掲載)

 

 ■地域の目で点検、広い視野で合意

 自治会を単位とした「ミニ開発計画」づくりは、単に地域の要望の羅列にとどめず、地域とまちの将来をフリーハンドで描かせると同時に、何が一番必要かという優先順位付けも住民に任せた点に大きな特徴があります。政策形成過程から住民を参加させるという手法が約30年前に実践されたこと自体驚くべきことですが、計画づくりの過程で住民は、地域の細部を再点検し、地域や町にとって何が大事かを見極め、話し合いの中で利害を調整し合意を形成するという経験と、自分たちの手で町を創っているんだという喜びをつかみ取りました。

 一方、行政の側は、ミニ計画に盛り込まれた住民の夢を実現するための仕組みも整備していきました。ミニ計画を基にして作成した「コミュニティカルテ」は、それを見るだけで実現状況が把握でき、各地域の住民の目に触れさせることでさらに住民の意向をフィードバックさせる。事業の実施計画は、カルテの緊急度のランク付けに応じて導入を図る、といったシステムが確立されています。

●身近な課題から考える

  政策形成過程における住民参加は、今日的な課題としてさまざまな研究や試行が行われていますが、形式的な参加にとどまりがちな傾向を見せているのは、縦割り行政の影響からテーマが個別的・専門的で、なおかつ生活実感と距離があること、事前に関連する情報が十分に提供されていないことなどが要因と考えられます。また、住民の提案なり要望・意見が最終的にどう処理されたのか、それはなぜなのか、情報のフィードバックや「納得行く説明」が不十分なことにも起因しているようです。

 藤沢町の場合は、自治会・担当職員が行政情報・住民情報の日常的な共有に大きな役割を果たしていることから、住民は地域内にとどまらず他の地域や町全体についても、一定の判断材料を共有していることが、大きな特徴です。ミニ計画づくりも、暮らしの周りの身近な課題が思考の出発点になっているからこそ、プラン〜ドゥ〜チェックの政策形成・遂行システムに住民意思がうまく反映されているといえます。

 岩手県南部の宮城県境にある藤沢町。国道も鉄道も走らない山間地で、企業誘致にはハンディを背負う。それでも、企業立地が進み、ふるさとへUターンする若者も少なくない。縄文文化を受け継ぐ「野焼祭」には海外からも参加者がある。

 

 

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