来るか 地域主権時代〜藤沢町に見た住民自治の姿

【5.課題と方向】

地域メディア研究所代表 梶田博昭

2002/09/24
(オンラインプレス「NEXT212」95号掲載)

 

 ■合併…「集落単位の基盤は不変」

木造の役場庁舎の向こうが町立病院

  自治会の組織化・ミニ計画づくりがスタートしたのが1974年、町民参加による福祉支援活動の核となる「ボラントピアセンター」の開設が1993年(1996年NPO法人取得)。住民参加型まちづくりの最先端をかき分けてきた藤沢町ですが、今や「先発後進国」と見て、新たな展開を模索しています。北上川の氾濫、過疎の進行。そして今度は財政危機や市町村合併問題に象徴される自治体再編の波が、小規模町村を押し潰しかねない。

 住民は、「行政が広域化していくとしても集落単位の生活基盤は変わらない。しかし、これまで以上に住民同士の結束を強めることが必要だし、地域の声を反映させるしくみが重要になってくる」(菊地庸夫自治会協議会長)といいます。佐藤町長もまた「住民の考え方一つで行政も変わる。国と県、県と市町村、市町村と住民が対等の立場で語り合う時代に入った。住民、行政ともに意識改革が求められている」としています。2001年4月には、「自治推進振興室」を新設し、「情報」「研修・学習」「消防防災」の分野を重点に「協働」の体制強化に乗り出しました。

●コミュニティを生かす視点で地方再編

 藤沢町は、ヘルメットや電子基板、化粧品などのメーカーの工場を誘致し、産業の基盤づくり・雇用の場確保にも一定の成果を上げていますが、少子高齢化により自治会・コミュニティを支える足腰が弱まってきていることも現実です。また、NPO活動の活性化など協働の分野が広がっていくことに対応する意味でも、より若い世代の参加や自治会再編を含めて、活動の足腰を強化することが課題になってくると思われます。 また、市町村合併により小規模自治体ばかりでなくコミュニティまで崩壊するような事態は、避けなければならないでしょう。合併が地方自治を進める一つの手段とするなら、コミュニティを生かす形での再編と住民参加のしくみづくりが必要だと思います。 特に、北海道を考えた場合、藤沢町で現実に行われているような近隣自治(ネイバーフッド・ガバメント)的な新しい仕組みを組み立てることで、コミュニティを生かしながら住民自治を定着させていく発想も必要ではないかと考えます。

 

 

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