特集 2002年 地域はどう変わる

2. 公共事業 「地域価値」再発見・想像にカギ

2002/01/15
(オンラインプレス「NEXT212」64号掲載)

 

 市町村合併を含めて地方自治やコミュニティの在り方を大きく変える引き金となっているのが、地方財政の危機です。小泉内閣の「聖域なき構造改革」は公共事業の削減を柱とし、地方交付税の見直しとともに、地方の変革をいやおうなしに迫っています。

 地方財政の問題を解決し、分権の流れを確かにするためには、国と地方の関係の見直しは、避けて通れない課題です。特に、国から地方への税源移譲は大きな課題ですが、暮れに発表された経済財政白書では、地方公共団体の公共事業を10%削減した上で、国と地方の税収比率を現在の6対4から5対5に変えても、自立できる自治体は人口10万人以上のまちに限られるとしています。

 ■政策選択に地域の独自性発揮

  この試算によれば、小規模自治体にとって広域合併は避けることの出来ない道であり、公共事業の削減自体が地域に深刻な影響を及ぼしかねません。しかも、GDP(国内総生産)の6%以上を占める公共投資の比率を、欧米の2%前後まで縮小するとなると、向こう5年間にわたって公共事業を毎年10%づつ削減しないと追い付かない計算です。 

 こうした公共事業の大胆な見直し・削減には強い抵抗もあり、なお論議を呼びそうですが、地方自身が公共事業の在り方を見直すべき転換点に立っていることも事実です。

 公共事業の中でも大きなウエートを占める道路建設の見直しが叫ばれる一方で、三重県は10か年計画で県内755本の道路のうち280本を優先整備することを決めました。公共事業全体を評価する中で、住民・地域の必要性、事業効果の度合を評価した上で選択した結果でした。

  秋田県二ツ井町は、30年がかりで300億円必要とされた公共下水道の整備計画を、40億円ですぐ出来る合併処理浄化槽の整備に政策転換しました。水洗化の住民ニーズに応え、水環境を保全するという目的実現のために導き出した、ごく自然な選択でした。

 ■「ふるさとスタンダード」のモデル

  財政危機に対峙しながら、どうまちづくりを進めるか。莫大な事業費・税を投入するのではなく、住民にとって何が必要で何が必要でないか。支払った税と受け取るサービスの対価を鮮明にすることができるかどうか。そんな視点を明確に持つことが出来るまちは、生き残りの可能性を手に出来るでしょう。

 地方における公共事業の見直しは、国の画一的な枠組みにとどまらずに、自分たちの住む地域の価値の見直し、あるいは新たな価値の創造を目指すことでもあります。「ゆとりを持った子育ての出来るまち」「元気な高齢者が一線で頑張るまち」「自然エネルギーを生かしたまち」そんな独自性にあふれたまちが、地域スタンダードのモデルとなってくるかも知れません。

 

 

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