212の21世紀〜マチは変われるか

第3部・情報編

 4.情報公開
 横並びの条例化、低い活用度/課題は「公開」から「提供」へ

 地方分権法の施行に伴い各自治体は、多くの条例を改正しなければなりませんでした。自治体の中には、改正作業を業者に全面的に委託した例も見られ、マスコミの中には「丸投げ」と批判する声も聞かれました。国と地方の事務分担の変更や廃止に関わるものが主体で、ある程度定型化された改正作業については「アウトソーシングの有効活用」も必要かとも思います。

 ■迫られる「自己決定」

 「自前」で取り組んだ少数派自治体のある町長は「条例づくりは自主自律の取り組みの一つ。職員は大変だったが、これから増えていくだろう条例づくりの良い体験になった」と話してくれました。確かに分権が進むほど「自己決定」が求められるわけですから、自治体職員や議員は住民と行政の権利・義務を明確にする条例に無関心ではいられなくなるはずです。

 これまである地方自治体の条例はどちらかというと国の方針の下に、あるいはモデルにして制定されてきましたが、情報公開条例は地方先導の珍しいケースです。国内初の公開条例は八二年に山形県の金山町で制定され、道内では帯広市が八六年に先鞭を付けました。国の情報公開法は昨年ようやく制定されました。ただし、情報公開を請求できる根拠として「知る権利」が明記されていないなど、問題点も残されています。

 海外ではやはり米国が最先端を行っています。行政情報は公開が大原則で、不当な非公開には処罰規定もあります。ファクスやインターネットを通じてごく簡単にだれでも(外国からでも)手に取ることができるようになっています。

 さて、北海道ではどうでしょうか。昨年四月一日現在の道のデータでは、四十九市町が制定済みとなっています。この春「モデル条例案」を作成し法律の専門家の立場から条例づくりを後押ししようとしている札幌弁護士会のアンケート調査では、未制定の自治体の多くが「検討中」と回答しており、国の公開法制定が一つのきっかけとなっているようです。

 ■精神未だ定着せず

 制定の動機についていくつかの自治体に聞いてみても、「中央追随」や「横並び意識」が見え隠れします。制定の過程に市民を参加させてどういう形の公開が良いか、と問いかけたり、提案に積極的に耳を傾けた自治体はごく少数にとどまっています。住民の強い要求に押されて制定したケースもあまり見られません。

 条例の意義や内容が十分に住民に知らされていないためか、施行から一年以上たってもなお申請ゼロの自治体さえあります。

 市民オンブズマン団体の「公開度ランキング」で全国一とされた札幌市のPRパンフでは、転入の際に学校の区域、病院の所在地などをたずねるケースを利用例として紹介していますが、情報公開の本来の目的を考えると、少しばかり首を傾げざるを得ません。公開される情報の範囲ばかりではなく、「活用度」や「簡便性」がこれからは重要になって行くでしょう。

 情報公開の本質は、国民の「知る権利」を保障すると同時に、行政に対しては「アカウンタビリティ(説明責任)」を明確に課していることです。これにより、住民監視の強化と住民参加を促し、住民主体の地方自治を実現することが目的です。「住民自治」の理念に立てば、情報は「公開」から積極的な「提供」へ、住民は単に行政を「監視」する道具とするのではなく「参加」のステップとして活用する段階へと進む時期に差しかかっていると思います。