「住民向け予算説明書」作成のポイント

(下)

 (1) 分かりやすい

 「町民向け予算説明書」の最大のねらい所ですが、実際には分かりやすく説明するというのは、なかなか困難なこと。目安は、中学2年生が読んで理解できるレベルで。先行自治体では、「行政が標準語だと思っていても、住民には通用しないことがある」「説明しようとすればするほど、文章が長くなって、ますます分かりにくくなることもある」といった担当者の嘆きも聞かれます。

 【ポイント】

  • シンプルに整理し直してみる
  • 「たとえ」をうまく使い、言葉の不足はグラフや表、写真などを使った見せ方で工夫
  • 「ものさし」を使っての比較対照(経年、他自治体)も有効

福井県今立町の予算説明書

 (2) まちと暮らしの変化が実感できる

 予算は行政が1年間に行う課題を並べたものでもあるわけですが、住民の側から見ると、「役場が何をやるか」ということよりも、その結果として「まちがどう変わり」「生活にどんな変化がもたらされるか」ということに関心があります。この点を示してやることも大切です。

 【ポイント】

  • 事業、施策の具体的な目的と、もたらされる結果を明示する
  • 目標に対する進捗度や貢献度、総合計画との関連も説明し、政策の全体像を理解させる

 (3) 1年間にわたって住民が町づくりに参加するための
       ハンドブックとなる


 配布されたときに一覧されるだけで、「積ん読」状態になるのでは意味がありません。まちの動きに合わせ、ニュースや議会開催の折に触れて、住民がページをくくり、確かめ、疑問を抱くような、ハンドブック的な機能を目指すべきです。

 【ポイント】
  • まちづくり町民会議や、出前講座などと連動させる
  • 目次や索引を工夫する
 (4) 点検と評価の視点を加える

 予算は単年度主義が原則ですが、まちづくりは中長期の展望に立って動いています。行政は計画〜実施〜点検〜改善〜計画の繰り返しであり、年度予算は前年度までの政策・事業の点検・評価・改善という要素を踏まえて作られています。住民にも、こうしたサイクルの中で個々の事業なり予算が組まれていることを理解してもらうことも必要です。

 【ポイント】
  • 決算情報や行政評価など予算の前提となる点検、評価の内容を説明する(評価システムの導入が前提となる)


 (5) 政策決定のプロセスが分かる

 なぜ、この予算・事業が必要なのかを示す意味で、裏付けとなるデータや住民の意向、代替案との比較検討など政策決定の過程を明らかにすることも必要です。「町民向け予算説明書」は確定した予算が前提ですから、説明書の中というよりは、予算案の取りまとめや議会審議と連動しながら情報提供することが理想といえます。

 (6) その他の留意点

  • マイナス情報の提供
  • バリューフォーマネーの明示
  • 情報のデジタル化

(了 10.Nov,2000)