212の21世紀〜マチは変われるか

第1部・財政編


 特別会計の穴埋めに苦吟

 これまでは主に市町村財政のうち「一般会計」と呼ばれる部分に目を向けてきましたが、一般会計とは別に「特別会計」と呼ばれる、いわば家計本体とは別の「かまど」にもいくつかの不安材料を抱えています。
 特別会計として処理されているのは、上下水道、病院、交通など自治体が経営する公営企業や国民健康保険、老人保健医療、交通災害共済事業などです(総称して「地方公営事業」と呼びます)。公営の観光施設や競輪、ばんばなどのいわゆる公営ギャンブルも特別会計で扱われます。

 ■赤字補てん慢性化も

 特別会計は基本的に独立した会計として処理されますが、下水道整備などの建設事業には「企業債」と呼ばれる地方債が発行されます。また、経営の内容によっては一般会計から「繰出金」という名の「持ち出し」を行うことがあります。逆に特別会計の利益の一部を一般会計に繰り入れることもありますが、国保、老人医療、下水道事業では、しばしば多額の繰出金によって穴埋めが行われています。

 道営のホッカイドウ競馬が経営不振にあえぎ、存続論議にまで発展しましたが、これも道の特別会計の一つです。かつては黒字経営が続き、利益が道の財政に貢献した時期もありましたが、今は「持ち出し」による赤字の穴埋めが話題になっているというわけです。

 繰出金は、「補助金」「負担金」「出資金」「貸付金」など様々な名称が付けられています。しかし、いずれにしても一般会計からの持ち出しにほかなりません。公営企業では赤字補填や運転資金の財源として支出されることもあります。

 道内二百十二市町村の九七年度決算では、総額約三千七十一億円が繰り出されており、国保、病院、下水道、老人保健医療などの占めるウエートが高くなっています。国保については、医療費の増加や保険料の滞納などの問題も絡んで、市町村の国保会計は慢性的に悪化しています。

 ■札幌市が最多の14%

 歳出に占める繰出金の比率は、表にあるように全体として都市が高めになっており、札幌市は一四%近くで最も高くなっています。札幌市の場合は、千百四十一億円のうち交通事業会計が三百七億円、下水道事業会計が二百七十九億円を占め、特に地下鉄部門を抱えた交通事業の負担が一般会計にも影響を及ぼしていることがわかります。

【繰出金比率ランキング】

 ワースト 10  ベスト 10

順位

市町村

比率(%)

順位

市町村

比率(%)

1

札幌市

13.96

1

白滝村

0.46

2

赤平市

13.21

2

留寿都村

0.73

3

小樽市

12.85

3

生田原町

1.17

4

苫小牧市

12.83

4

小平町

1.30

5

釧路市

12.61

5

北村

1.49

6

芦別市

11.01

6

音威子府村

1.56

7

根室市

10.89

7

平取町

1.57

8

士別市

10.88

8

鶴居村

1.71

9

滝川市

10.82

9

椴法華村

1.74

10

名寄市

10.67

10

丸瀬布町

1.75

 これらの公営事業は住民生活に直結した事業が多く「より高度なサービスをより小さなコストで提供する」という、難しい課題を抱えています。逆に非効率な事業運営や不健全な財政は、そのままサービスの低下や料金アップといった形で住民にツケが回ってくることに注意しなければなりません。

 過疎が進む町村は財政基盤自体の弱さが問題ですが、基盤がしっかりしているはずの都市部では、特別会計事業の赤字や一般会計からの多額の繰出といった不安要素を抱えているのです。しかも、これらの事業の多くは途中で投げ出したり、一気に問題解決を図ることが難しいだけに、深刻です。

 また、公営事業では企業経営的な感覚も求められますが、現実には役所的な感覚や構造的な問題が放置されているケースもあり、情報公開と住民によるチェックが重要な課題です。