市町村合併を考える2-1

2000/10/27

 

自治体の守備範囲と公共サービス

 前回、1市町村当たりの平均面積は約117平方キロメートルで、北海道の3つの町が合併すると日本一広大な都市が誕生するとお話ししました。では、地方自治体の「適正面積」というものはあるのでしょうか。

 外国に目を転じると、フランスが約15平方キロメートルと極端に狭いのが目に付きます。ドイツ(22平方キロメートル)、イタリア(37平方キロメートル)など西欧諸国は総じて小面積です。米国は約260平方キロメートルと中規模、英国は約500平方キロメートル、カナダ、北欧諸国とともに広くなっています。

■機能分担進む英米は広大

 ただし、自治体に対する考え方は国によって、千差万別ですから、単純に比較は出来ません。たとえばフランスの場合は、公共サービスが「中央主・地方従」の関係にありますから、まちが小規模だからといって、非効率であったり不便ということにはなりません。

 米国の場合は、自治体の形態が非常に多様で、公共サービスの供給主体と自治体は必ずしも一致しません。特定のサービスに限り、州や州内をいくつかに区分したカウンティと呼ばれる機関が扱うこともあります。自治体の境界線とは無関係に、教育や消防など特定目的のサービスを供給する機関が設けられることもあります。

 公共サービスをサービスの内容や量、供給方法などによって幅広い機関、団体が分担する英国も含めて、公共サービスの多くを市町村が担う日本とは随分事情が違うようです。

 面積が広いということは、移動時間が長いということですから、住民の移動を伴うような公共サービスは、一般的に広ければ広いほど不便で、非効率ということになります。ところが、IT(情報通信)技術の活用によって、人間が移動するのではなく、情報が瞬時に移動できるようになれば、時間と空間の壁は取り除くことが可能です。

 地域情報の高度化とか電子政府・電子自治体は、こうした考えに基づいています。役所への届出や申請だけでなく、病院や美術館ですら、足を運ばずに一定の目的を達成することがができる「サイバー社会」は今や現実の世界となってきているのです。 

 

 

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