市町村合併を考える2-2

2000/10/27

 

合併の一方でコミュニティ細分化?

 ボーダーレス化が進み、サイバー社会が実現したとしても、学校やスポーツ施設が何十キロも離れた所にあるのは不便ですし、遠隔医療は基幹となる医療施設と医師らが一定の時間距離のエリア内に存在することが不可欠です。ごみや生産物の移動の効率性も、面積とは無縁でありません。

 こうして考えると、自治体の適正面積などはじき出せる性質のものではないけれど、個々の公共サービスについては、効率性の面から面積の大小が意味を持ってくることもありそうです。この場合、自治体がどこまでサービス供給を担うのかが、問題となってきます。

 英米に比べて守備範囲が極めて広く、独占的でもある日本の自治体の場合は、やはり面積の制約は大きく、市町村合併に当たっても、重要な要素となるはずです。また、発想を転換して、自治体が総合商社のように公共サービスを一手に担うのではなく、地域のさまざまなセクターとの間で分担するという考えに立てば、また少し話は違ってくるでしょう。

 自治省が示した市町村合併の推進についての指針では、面積についてあまり触れていません。わずかに、中山間地など人口密度の低い地域では、総面積だけでなく可住地面積などを勘案すべきとしている程度です。平均面積が全国の3倍近い北海道の場合は、現在の役場間の移動に1時間程度で済む、つまり40qの範囲内を合併の目安として設定してます。

■人口規模に応じ権限移譲

 指針や都道府県の推進要綱では、合併後の人口規模を重視し、市制移行の要件となる5万人(特例により現行4万人)、広域市町村圏の設定基準の10万人、特例市の20万人、中核市の30万人を合併パターン設定の目安としています。

 市制移行すると、福祉事務所の設置が認められたり、特例市では保健所の設置など国、都道府県からの権限移譲が進みます。その分業務は増えますが、より総合的な行政の展開が可能になるというわけです。

 ここで少し気になるのは、中央から地方への権限移譲が、人口規模の拡大に合わせてステップ式に組み立てられている点です。権限移譲が、より自主的なまちづくりの基盤になるのだとすれば、人口規模で区分する必要はありませんし、より多くの人口を抱えていることが住民の生活を快適にする要件でもないからです。

 確かに、行政の効率化という点で合併の効果は大きなものが期待されます(前回紹介したひたちなか市のケースを参照)。しかし、供給する公共サービスの内容・性質によってはスケールメリットにも規模の限界点があるはずですし、「効率」と「きめ細かさ」が必ずしも一致するわけではありません。

 一定のエリアに住んでいる人間同士が触れ合ったり、力を合わせたりするのがコミュニティだとしたら、効率を追求する合併の一方で、コミュニティの細分化という現象が起きてくるでしょう。むしろ、コミュニティの在り方を考えることで公共サービスを提供する自治体の在り方を考えるべきなのかも知れません。

表:北海道合併推進要綱のパターン類型

 

類 型 人口規模 数   パターン例
中核市移行型 30万人超 5 幌加内町、旭川市、鷹栖町
特例市移行型 20万人超 5 千歳市、苫小牧市、早来町
地域中心地形成型 10万人超  14 小樽市、赤井川村
市制移行型 4万人超 27 門別町、新冠町、静内町
体制整備型A 2〜3万人 25 浦河町、様似町、えりも町
体制整備型B 1万人程度 17 島牧村、寿都町、黒松内町

 

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