市町村合併を考える3-1

2000/11/17

 

広域連合に対する期待と限界

 市町村合併を考えるシンポジウムが、全国リレー方式で開催されています。既に40都道府県で開かれ(11月17日現在)、住民を交えた熱心な論議が行われています。主催は自治省と府県、地元新聞社などで、自治省関係者、学者らが基調講演し、地元自治体トップ、経済、住民団体関係者を交えたパネルディスカッション、というのがパターンのようです。

 「そろそろ本気で考えようよね」のキャッチフレーズのとおり合併推進が基本になってますから、少し乱暴にまとめると、さまざまな特例の恩恵が受けられる2005年3月までを目標に合併を目指さない手はないよ、という内容です。パネラーとなった地元自治体関係者は、概ね「総論賛成」の考えを示しながらも、現実の困難さや不安ものぞかせ、あるいはさらに手厚い「援護」を求める場面もありました。

 8月に更埴市で開かれた長野県のシンポジウムでは、近隣2町と任意の合併協議会を設置した更埴市長らが推進論を展開したのに対して、人口2200人の泰阜村長は「小さいからできる行政サービスもあり、合併が中山間地の住民の幸福につながるとは思えない」と合併に消極的な考えを示した上で、近隣自治体が住民に提供するサービスに応じて連携する広域連合制度を活用する道を主張しました。

 合併の前に広域行政を論じるべきだ、という意見は根強くあります。確かに、広域化によるスケールメリットと、行政全体ではなく個々の公共サービスの質的向上という面を考えると、改めて広域連合を検証してみる必要もあると思います。

■制度上は日本版「EU」

 そもそも、広域連合とは、どんなものでしょうか。

 27道府県で68(9月27日現在)の広域連合が組織されていて、このうち全121市町村が参加した10の連合を抱える長野県は、三重県と並んで「広域連合王国」なのです。ところが、昨年10月、上伊那広域連合が住民を対象にアンケート調査を行ったところ、広域連合そのものの存在を知らなかった人も含めて半数以上が「何をやっているか分からない」と回答しました。

 95年に導入された広域連合制度は、介護保険により認知度は高まってはいますが、広域連合の長や議員が直接、間接選挙で選ばれ、不満があれば住民の直接請求も認められた「自治体並み」の仕組みを持っていることは、あまり知られていません。ゴミ処理や消防などの事務だけを協力して行う一部事務組に比べると、さまざまな広域的な住民ニーズに柔軟・効率的に対応でき、国からの権限委譲の受け皿となることもできるのです。

グラフ:広域連合の設置数の推移

 

 

 

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