サービス形成勘定
大分県・臼杵市

 ■企業会計ヒントに住民サービスの原価を計算
 バランスシートと並んで財政情報を積極提供

 地方自治体の行財政改革の一つとして企業会計方式の導入が注目を集め、道内では札幌市や後志管内蘭越町などがバランスシート(B/S、貸借対照表)の導入に取り組んでいます。財政に関する情報公開と同時に、負債や資産がどう変化しているかを分かりやすく示すことで、財政健全化や政策選択・財源配分を考える際に役立てようとの発想に基づいています。

 バランスシートと並んで企業の会計状況を示すために使われるのが、損益計算書(P/L)で、臼杵市が99年度から導入を始めた「サービス形成勘定」は損益計算書の考え方を自治体会計に反映させたものです。

 損益計算書は、商品の製造・販売やサービス提供を通じてどうコストをかけどう利益を上げたかを表します。自治体の事業は利益が目的ではありませんが、行政サービスを受ける住民の側から見ると「どれだけためになるか、生活の利益になるか」は切実な問題です。行政を住民に提供するサービスととらえて、そのコストを仕訳して把握することは、一般には分かりにくい財政情報を「原価計算」の形で情報公開し、新たな政策判断や無駄の排除にもつながると考えたのです。

 バランスシートと同様に生活、環境、教育、福祉、産業、総務の6部門に分け、さらにモノを経由して提供されるサービスと直接提供されるサービスに区分してコスト計算をしています。このうち福祉部門の内訳表を抜粋しましたが、まだ試行段階であり、今後はさらに細分化した原価計算や同規模自治体との比較対照などの検討が必要です。

 また、市民の利益を市民がはかる材料を提供すると同時に、サービスの質がどうだったかという面からの分析も必要となってきます。サービスの受け手である顧客つまり住民の評価・満足度を測ることができれば、行政の質と量をより正確に把握でき、住民参加による自治体経営が可能となるでしょう。