合併の情報公開
東京都・田無、保谷市

 ■デメリット情報含め積極提供、市民も自主的に賛否を論議

 90年代の初頭から合併論議が続いていた東京都の田無・保谷両市は、この8月11日の両議会で合併に伴う関連議案が承認され、来年1月21日に「西東京市」として生まれ変わることが正式に決まりました。合併は複数の自治体の考えを一致させるだけでも困難な上に、新しいまちづくりの方向を決めるわけですから、住民の意思をどう吸い上げるかが大きなポイントとなります。

 田無・保谷両市は、徹底した情報提供と住民を検討作業に巻き込むことで、着実に合併への歩みを進めて行ったモデル的なケースといえます。協議の過程で、それぞれの職員の給与水準や公共施設の利用状況、料金など詳細な資料が市民向けに公開されました。合併のメリットだけでなくデメリットについても、両市は、その対処策と合わせて積極的に外に出しました。

 まちづくりを考えるための情報が豊富ですから、市民参加によるフォーラムや勉強会も活発に開かれました。フォーラムは決して行政による市民への説明会ではなく、市民同士の対話と意見集約の場となっていました。出席できない市民に対しては、両市の広報紙の「合併版」やインターネットなどを通じて詳細な情報や中間報告が提供されています。

 この結果、新市の将来構想には、シルバー人材の専門家登録制度や各駅に隣接した子育てサポートセンターの創設、市内循環のコミュニティバスの運行など市民の目線に立ったアイデアや提言が反映されています。合併問題を市民の側から再検討してみようと、独自に両市民を対象にした意向調査を行った市民グループもありました。

 田無・保谷のケースは、行政や住民に関する情報が地域の中でうまく循環し、単なるお知らせやデータにとどまることなく、まちづくりの知恵や力に発展している好例ともいえます。