ワンポイント・レポート


山梨県早川町・コミュニティシンクタンク

2000/12/22

 

地域密着の調査研究と情報発信

 山梨県早川町は南アルプスの奥懐にある、人口2千人足らずの鉄道も国道も通っていない寒村。ここに日本上流文化圏研究所が設立されたのは96年のことでした。都市文明が発展する一方で失われてきた地域の文化を、山の文化と海の文化の交流を通じて再生・創造することが目的でした。過疎の代名詞とされる中山間地域が、実は水系を基本として成り立つ文化の源流であるとの視点から動き出したのです。

 ■文化の源流を再構築する

 調査研究のテーマは、(1)最も純粋な自然に近い上流域にこれから生きる人びとの心のよりどころとしての哲学と、それが生みだす文化の姿を探り出すこと(2)世界と日本の上流文化圏情報の受発信と交流(3)早川町新総合計画シンボル施策の構想立案(4)早川の生活と産業の再構築についての立案、上流文化資源の発掘〜などです。
 町を一つの単位として、地域に密着した調査研究と情報の受発信に取り組むスタイルは、新しい形の研究機能であり、「コミュニティ・シンクタンク」のモデル的な存在となっています。2000年度からはここを起点にコミュニティ・シンクタンクの存立条件を探る共同研究が、地方シンクタンクなどとの間でスタートしました。
 コミュニティ密着でありながら、広範な人材と研究機能をネットワークした組織態勢が極めて特徴的といえます。これは、世界や日本全国からの視点、地元からの視点、そして都市からの視点という3つの視点から、人材を求めたことによります。ネットワークの広がりの背景には、92年に全国の知恵を結集して開催した「ゆうげし集会」の存在があります。

 ■多彩な人材をネットワーク

 理事会、事務局は、地元の住民を中心に構成し、全国の地域づくりのリーダーや大学・シンクタンク研究者、企業関係者、 学生らが協力員のネットワークを組んでいます。その顔ぶれは多彩で、環境や地域づくりの研究に成果をあげている民間の研究所や、早川を支援しようという企業のスタッフの参加が、活動がより深く幅広いものにしています。また、研究テーマに共鳴した大学の研究機能も導入されています。
 町民主体の研究活動も活発に展開されています。郷土料理、遊びとおもちゃの研究、文化としての掘り起こしや、古道探索や水環境の現地調査、古文書研究などに取り組んでいます。町内の空き家の現状を把握しながらデータベース化し、地域の資源として有効活用の道を探るといった取り組みも進められています。

 

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