「野伏せり」に立ち向かうムラ

 ▼…長崎市は、毎月発行している広報誌を市内の郵便局を通じて配布することになった。市民には好評らしいが、自治会を通じての配布率が89%まで落ちてきたためだ。自治会加入率の低下が背景にあるという。これは全国的な傾向であり、やがて自治会は無用の長物と化すのだろうか。

 ▼…自治会の活動といえば、防犯、美化、交通安全。補助金でまかなわれる年中行事が繰り返される様を見ていると、縦割り行政の端末機関にしか映らない。「自治」の意味はますます薄れ、「コミュニティ」というあいまいな表現に置き換えられていくようにも思える。

 ▼…しかし、ごみ問題や高齢者福祉、防災などごく身近な課題は、市町村よりもさらに小さな「生活共同体」を単位にした対策が求められている。「上意」に従うのではなく、むしろ、住民の側が協同して問題解決のために行政を巻き込んでいくことが必要なのではないか。地方分権の最終的な受け皿は、コミュニティにあるのではないか。

 ▼…黒沢明監督の映画「七人の侍」の舞台となった集落には、地域生活に関わって起こる問題に協同して対処する機能が見られる。住民は2、300人ほどだろうか。議論も対立もある。激論の末に、志村喬扮する勘兵衛が一喝する。「他人を守ってこそ自分を守れる。己のことばかり考える奴は、己を滅ぼす奴だ」。当時は自衛隊問題と絡んで論議を呼んだ「名せりふ」だが…。 

(27.Oct.2000 梶田博昭)