有権者1人当たり23セントをケチる

 ▼…もつれにもつれた米国大統領選で、最後まで気を揉ませたのがフロリダ州の開票結果だったが、私は同じように開票作業が遅れていたオレゴン州に興味を持った。作業が遅れた要因は、全面的な郵送投票方式を導入したから、と報じられた。導入の理由の一つが、選挙費用を節約するためだったという。

 ▼…有権者1人当たり23セントで、都合約45万ドル、邦貨にして5千万円ほどの節約という計算になる。勝ち負けが二転三転したイライラも手伝ってか日本のマスコミには「このインターネット時代に…」という冷ややかな見方もあった。しかし、もう一つの導入の理由は、投票率の引き上げにあり、むしろこちらが主たる狙いなのだ。

 ▼…日本でも行政評価のお手本とされるオレゴン州のベンチマークリストでは、市民参加推進の指標の一つに投票率を設け、2000年度に70%、2010年度には84%を目標に掲げている。早く投票結果を出すことよりも、市民参加拡大の手段として郵送投票方式を選択したといえる。因みに、東京都の評価表「チェックアップリスト99」には、投票率を含め政治参加の項目はない。

 ▼…選挙速報を見ながら、かつて郵便投票など在宅投票の制度化を求めて裁判で闘った小樽の佐藤享如さん(故人)を思い出した。判決の日の朝「投票所 月より遠く ねたっきり」と詠んだ彼が今も元気だったら、大統領選を見てどんな川柳を作っただろうか?。

(10.Nov.2000 梶田博昭)