「スズメの学校」の宝探し

 ▼…役場の職員が講師となって地域に出向く「出前講座」が花盛りだ。埼玉県の八潮市では、児童生徒14人が講師陣に名を連ねている。最年少・小学4年生の田中萌美さんは、風船をねじりながら動物をつくる技術を保母さんや女性ボランティアグループに指導し、なかなか好評という。

 ▼…一方、不評で住民から声がかからない、という悩みも聞くが、政策PRを狙った行政説明会では、住民の苦情を承る場になりかねない。社会教育を主管する教育委員会と、一般行政部局との「縦割り行政」が、魅力の乏しいものにする一因ともなっている。

 ▼…社会教育・生涯学習は、個人レベルの知恵の蓄積にとどまらず、地域の知恵として積み上げていくことが大切ではないか。住んでいるマチを知り、人を含めた地域の資源を掘り起こしていくことが、まちづくりにつながる。だから、だれもが講師になれる。「ムチを振り振り」の「スズメの学校」ではなく、八潮型の互いに教え合い、学び合う「メダカの学校」が求められている。

 ▼…まちづくりは、自分たちが住んでいるマチを知ることから始まる「宝探し」のようなものだ。新しい物に対する吸収力と可能性を秘めた子どもたち、実体験に裏打ちされた知恵を持つお年寄り、それに住民には見えない価値の存在に気付かせてくれる外の人間。この三者が宝探しのカギを握っているような気がする。

(1.Dec.2000 梶田博昭)