環境素材王国のすすめ

 ▼…沖縄で昆布を使った料理に出会ったとき、妙な感覚を覚える道産子は少なくないだろう。沖縄と北海道産昆布の出会いは、江戸時代のちょっとした偶然による。堺の港で松前からの船と沖縄からの船が、互いに手違いで買い手がない昆布と砂糖を取り替えた。その滋味豊かな海の幸が、京都と沖縄で食材として花開いたわけだ。

 ▼…この逸話は、ときに北海道の食文化と産業に結び付けて論じられる。「素材に寄りかかり、付加価値を加える工夫がない」。果ては「だから北海道は自立ができない」。財政難を背景に公共事業の見直しなど地方への風当たりが強まる中、自立どころか自律にも苦しむ北海道にとって耳が痛い。

 ▼…しかし、自律のための挑戦も始まっている。しかも素材は1次産品。たとえばサケの白子から液晶の材料となるポリマーを作る研究が産学連携で進められている。寒冷地のバクテリアを利用して魚介類の廃棄物から高濃度のアミノ酸物質を取り出すバイオ技術も、実用化の段階にある。

 ▼…これらは高付加価値で巨大マーケットを持つだけでなく、環境にやさしい循環型産業としても期待される。1次産品を食料資源というよりも「環境素材」としてとらえる発想は、北海道の産業の未来を変える可能性をはらんでいるような気がする。産学の連携に加え、松前商人のマーケティング力、それに地域経営の戦略が必要だが。 

(4.Jun,2001 梶田博昭)