「下水道信仰」の崩壊

 ▼…下水道事業のために全国の自治体が借り入れた企業債の残高が、年々急増し、総額30兆円を超えた。下水道は道路などとともに、インフラ整備の柱の一つだが、各自治体の下水道会計の99%は赤字で、一般会計からの穴埋めでやり繰りしているのが実情だ。そして、ここにも無駄がある。

  ▼…秋田県北部の二ツ井町が試算したところ、公共下水道を集落が分散した町内に張り巡らせるための事業費は約180億円。これに対し、各戸の庭に設備を埋設する合併処理浄化槽なら、約20億円どまり。町の支出金は、27億円に対して8億円で済むことから、町長は浄化槽への大転換を決意した。

  ▼…自治体財政の悪化を背景に「脱・下水道」の動きは全国でじわじわと広がっているが、逆風もある。なぜなら、下水道整備は、道路と並んで地元にカネを落としてくれる公共土木事業だからだ。先日、現職が再選された二ツ井町長選でも、「景気直結の下水道」か「財政改革の浄化槽」かが争点となった。

  ▼…対立の構図は、構造改革論議と相似関係にある。二ツ井町など浄化槽へとシフトしてる自治体に共通しているのは、「都市と同じものを追求することが最善ではない」ことに気付いた点だろう。自分たちの住むまちにあった暮らしのシステムを重視しようとする姿にある。地方分権のキーワード「個性あるまちづくり」は、足元を見つめ直すところから始まる。

(23.Jul,2001 梶田博昭)