オンボロ役場に名町長あり ▼…スリッパに履き替えて上がる役所は、さすがに見かけなくなった。ある町の役場は、いつの間にかホテルと見まごう豪華庁舎に変わっていた。しかし、来客用のスリッパは用意してある。未舗装道路がまだ残っているから、雨の日は床の清掃が大変なのだという。町長室のふかふかの絨毯を見ると、確かに長靴の町民に「さあさ、どうぞ」とは行かない。 ▼…自治体の借金財政がクローズアップされた昨今、庁舎改築を言い出すのは相当に勇気がいる。「リストラ無縁の高給取り」と職員に対する住民の視線も厳しくなっているからなおさらだ。そんな中、宮城県中部にある富谷町は今秋、総事業費30億円を投じて新庁舎建設に着手することになった。 ▼…現庁舎を建てた70年当時は人口が5千人、職員は30人足らず。それが人口4万人近いベッドタウンに急成長した。職員は280人に。改築はやむを得ない状況だが、町は「勤倹貯蓄」を合言葉に20年がかりで建設基金を造成した。建設計画は、町民72人を含む百人委員会が主導した、いわば住民参加型の庁舎づくり。 ▼…設計コンペの審査では、建築の専門知識の集中学習も積んだとか。設計図を見ると、情報公開や住民同士の交流にスペースを割き、なるほど「シビックセンター」と呼ぶだけある。「PFI方式でなんとかならんか」と考えている首長さんには参考になりそうだが、やはり「優先度」が問題。それに不思議と、光っているまちほど、庁舎はオンボロだ。 (6.Aug,2001 梶田博昭)
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