「一国一城の主」のその後

 ▼…市町村合併がなかなか進まないのは、首長や議長が椅子にしがみついていたいからだ〜という見方がある。合併協設置の住民発議が「門前払い」にあう度にささやかれるが、恐らくこうした見方は、大概は間違っていると思う。ただ、その「座」にこだわらない首長や議長がいた場合、そうでない場合に比べて合併論議が前に進むケースは少なくない。

  ▼…企業合併なら、会長と社長のポストに住み分ける例が良くあるが、自治体はそうは行かない。では、どうなるのか?首長について過去の事例を拾ってみると、合併後に「引退」というのはごく少数派だ。副市長や増員した助役に就く例や、「顧問」「特別参与」「専門委員」といった肩書きの役職も目に付く。

  ▼…ある中核都市に編入合併された4町の元町長は、1人が議員に、残り3人は市顧問の任期終了後、家業や神職に戻るなど引退を決意した。旧町役場に建てられた「合併記念碑」を見るに付け感無量の思いに浸りつつ、4人ともに「10年後、20年後には合併して良かったと住民が心から思えることを信じての決断だった」と振り返る。

  ▼…10年後、20年後に限らず、まちづくりは百年の大計である。バブル期に三セク経営に失敗し、住民が向こう30年間にわたる莫大な借金を背負った例さえある。市町村の「横並び指向」がリゾートブームに踊ったように「合併」というはやりの半纏に浮き足立つようなことは、決してあってはならない。

(27.Aug,2001 梶田博昭)