論客の訃報

 ▼…「ミットで4、5球も受けてみれば、野球選手として素質があるかどうか分かるもんだよ」。議会審議がパンクし、長い「答弁調整」に入ると、議員控え室でよく聞かされた。そんな言葉を残して元道議会議員の小野秀夫さんが、亡くなられた。「長嶋茂雄を掘り出した」立教大学野球部OBとして知られ、新聞の訃報もこのエピソードが基調となっていた。

 ▼…しかし、私の知っている小野さんは、明確な視点と鋭い言葉を持って道政の本質を掘り出そうとした、地方議会きっての論客だった。71年の初当選と同時に旗揚げした新会派・道政クラブは、自社体制にくさびを打つ第三勢力となった。「党利党略はもう許さない。議会運営をガラス張りに」を合言葉にした。

 ▼…記者席から見る小野議員の質疑がやや精彩を欠いたように感じられたのは、横路孝弘(現代議士)知事の時代に入ったころだった。議会嫌いの知事が、徹底して論戦を避けようとしたからだった。「真摯に受け止め」「遺憾に思う」といった知事答弁の繰り返しに、名手のミットが鳴ろうはずはなかった。

 ▼…2年ほど前、議会に対する住民の関心が低いことを嘆き、自分の責任であるかのように漏らしていたのが今も印象に残る。「地方議会に与野党は不要。政策の批判と監視、それに政策提言こそ地方議員の役割。理事者にも反論権を与えるべき」とも話していた。地方分権の時代にこそ、小野議員のような「是々非々の論客」の存在が望まれる。

 (12.Nov,2001 梶田博昭)