ファーブルの目で見る

 ▼…地球温暖化問題を解決するために残された時間はあと50年。と言っても、50年後には世界の二酸化炭素排出量を半減させなければならないから、「まだ」大丈夫ということではない。「もう」行動を起こさねば間に合わない。北海道大学工学部の都市代謝システム工学講座では、そのシナリオをどう描くかという研究を進めている。

 ▼…「それにしても」とある教授は、ため息をつく。「その頃にはいない我々が、50年先を心配しているのに、多くの学生たちは他人事のようにしている」と。確かに、ある環境意識調査でも、40~50代で地球環境に対する危機感がこの10年ほどの間に高まっているのに対し、若い世代の反応が鈍いという結果が出ている。

 ▼…先日、道東の足寄高校で自然科学同好会の生徒から、ニホンザリガニの生息調査の話を聞いた。1匹1匹ノギスで計り、水質など周辺の環境データを取る地道な研究により「科学の甲子園(全国大会)」の出場権を獲得、高い評価を得た。何より、彼らは、絶滅危惧種の「最後の聖地」を守れるかは、そこに住む人間次第であることに気付いた。

 ▼…若者が環境に鈍感になってきているとすれば、自然な物に触れる機会が減ってきたためかも知れない。体長数センチのザリガニが発する危機のメッセージなど、誰もが見過ごしかねない。現に足寄の人々も、高校生の研究を機に、改めて地域の環境を見つめ直そうとしている。ファーブルの目線に立って。

(19.Nov,2001 梶田博昭)