水に流してはいけない話

 ▼…地球は「水の惑星」と呼ばれる。地球表面の約70%が海で覆われ、水の量は140京立方メートルとかで想像もつかない。4大文明は大河のほとりに発祥し、近代都市の多くもまた川や港と無縁でない。ところが、世界を「百人の村」にたとえると、村人の25人が慢性的な水不足に苦しめられているというのは一体どうしたことか。

 ▼…我々の母なる星は、実は「塩水の惑星」だった。淡水はわずか2.5%で、その多くは極地の氷であったり、とても手の届かない地中に存在する。結局、飲用や産業用として利用可能な水は、地球全体の水をバケツ1杯分とすると、スズメの涙ほどにもならない計算なのだ。

 ▼…さて、日本はと言うと、年間降水量は世界平均の2倍だが、人口密度が高く、川は短く急流だから、必ずしも恵まれているとは言えない。にもかかわらず、「瑞穂=水穂の国」として栄えてきたのは、水田やため池を使って巧みに水資源を利用してきた日本人の英知によるところが大きい。

 ▼…しかし、近年は木材や食糧資源の大半を輸入に頼っているから、水資源の輸入大国であり、消費大国とも言える。そう考えると、コンクリで固めた都市では降る雨を一気に海に流し去り、地方では生活排水で川を汚す私たちの暮らしは、果たしてそれでいいのか。百人村で「湯水のように」は禁句である。

 (25.Feb,2001 梶田博昭)