よこすかストーリー・Part2

 ▼…公立はこだて未来大学を設計した山本理顕さんが、2007年オープンを目指す横須賀市美術館の設計者に選ばれた。ハコ物建設といえば入札が一般的で、設計プランを基に競い合うコンペ方式もまれにあるが、今回は日本初のQBS(資質評価方式)という手法で選考が行われた。

 ▼…要は設計案ではなく、設計者の資質、つまり人物が選考の目安。最終候補は著名な建築家に絞られ、未来大学の実績と、設計プロセス重視の山本さんに白羽の矢が立てられた。コンペ方式のように原案に縛られることなく、ワークショップの手法も取り入れながら、白地のキャンバスに絵筆が入れられることになる。

 ▼…会計法、自治法などの制約をクリアしての横須賀方式は、これまでタダで案を作らされてきた建築界には好評で、公正・公平の面からも歓迎できる。ただし、QBSでは実績重視となるため、大規模な事務所や高名な建築家が有利となり、新たな才能が埋もれるといった欠点もある。

▼…シドニーのオペラハウスは、コンペの1次選考の落選作から拾い上げられた無名の建築家J・ウッツォンによって設計された。世界の均質化が進む中で、「場」にこだわった個性的な姿態は、建築が社会的行為であることを示した。ハコ物建築には、先鋭な才能と住民のコラボレーションも求められている。

(15.Apr,2002 梶田博昭)