氷が解けたら何になる?

 ▼…「氷が解けたら何になるでしょう?」〜「あったかくなって春になる」。答案は×だった。しょんぼり帰宅した子供の話を聞き、「答えは一つでなくてもいいのでは」と先生に疑問を投げかけたが、「やっぱり水ですよね」。アイヌ詞曲舞踊団を率いるアトイさんが、対談の中でそんなエピソードを聞かせてくれた。

 ▼今の日本の教育に欠けているものが、この話に透けて見える。円周率は「3.14」ではなく「およそ3」と教育する意味を先生たちはきちんと理解しているのだろうか、とも心配になる。マニュアル依存・デジタル思考が時折、ほころびを見せるだけに、教育現場だけの問題ではないと思う。

 ▼…瀋陽総領事館の亡命事件で、副領事らのお粗末な対応に、外務省高官は「マニュアルを用意しなければ」と漏らした。だが、欠けていたのは外交の基本原則の理解と、人の痛みを知る人間としての感性ではなかったのか。立派なマニュアルがあったらあったで、別の性質の過ちを犯していたのではないか。

 ▼…アトイさんは「せめて授業の中で、この答えをみんなはどう思うと、問いかける場面があってもいいのでは」という。同感だ。学校でできないならば、ほかの道もある。学校5日制を利用した「地育活動」が、学校教育に欠けたものを埋める可能性を秘めているように思える。

(3.Jun,2002 梶田博昭)