ワールドカップは「だんじり祭り」 ▼…ワールドカップで日本の初戦があった夜、新宿・末広亭では閑古鳥が鳴いていた。大取の圓窓が「客が来ないことよりも、噺家が来ないのではと心配だった」と笑わせたが、NHKまでがニュースタイムの大半をワールドカップで費やしていたのには、ちょっと怖いものを感じた。 ▼…日本の決勝トーナメント出場でさらに過熱する中、ラグビーの早明戦に出かけた。人気カードとはいえ、あちらは視聴率60%。不入りを予想していたが、スタンドは満員。「ニッポン、ニッポン」の大合唱も悲鳴もないボールの奪い合いを目の当たりにし、ニッポン人の有り様にぼんやり抱いていた不安が少し消えた。 ▼…「オフサイドはなぜ反則か」の著者でもある元広島大学教授の中村敏雄さんは、サッカーの起源を祭りに求める。「ゴールが決まればゲームは終わり。少しでも祭りを楽しむために、点を入りにくくした」。なるほど、ワールドカップは岸和田の「だんじり祭り」だったのか。 ▼…オフサイドは、肉弾相打つ陣地戦から距離を置いた「男らしさに欠ける行為」ともされる。それを逆手に取ったオフサイドトラップもまた「卑怯」だと、禁じ手にしているチームもあるそうだ。「男らしさ」も「卑怯」も死語に近いが、かろうじてそんな世界を垣間見せる戦いに、魅力が潜んでいるのかも知れない。 (17.Jun,2002 梶田博昭)
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