1億円の使い道

 ▼…W杯でイングランド代表のキャンプ地となった淡路島の津名町は、89年にふるさと創生基金で1億円の金塊を購入して以来の注目を集めた。62kgの「お宝」自体の価値は、目減りしているが、観光集客の目玉として今も地域振興に貢献している。雲散霧消した基金も少なくないから、ヒットアイデアともいえる。

 ▼…あの1億円をそっくり残していた村もある。群馬県中部の榛東(しんとう)村。利子も付いて今では1億6千万円に。そこでこの基金を活用し、住民参加型の地域づくりに取り組むことになった。21の行政区を単位に、向こう5年間、1区当たり最大で年300万円の事業費を交付する。

 ▼…事業のアイデアは、すべて住民次第。地域の連帯を深めながら、自ら考え、行動することを重視している。一倉登村長は「夢を語る中で、村民の心を取り戻してくれたら」という。言葉の裏には、近隣都市のベッドタウンとして人口が増えていく現実に対する不安の色もうかがえる。

 ▼…合併都市・さいたま市は、旧3市の行政総合センターがそれぞれ自主的に予算を使える「地域づくり推進事業費」を新たに計上した。そろってイベント補助を目玉としたが、「何のために、どう使うのか」行政の戸惑いも見られた。まちの規模とは無関係に、地域の細部に目を凝らすことが行政に求められている。

(24.Jun,2002 梶田博昭)