自由と「どぶろく」は共に手を取って進む

 ▼…「どぶろく特区」がどうやら実現しそうだ。抵抗勢力の筆頭は財務省だが、「国税大事」「消費者保護」の国会答弁を聞いていても、本当は何を守ろうとしているのか良く見えない論理だった。申請自治体はグリーンツーリズムの振興策として意欲を見せているが、地域文化の再生という原点を大切にしたい。

 ▼…スコットランドでは、イングランドの支配下に置かれた18世紀、スコッチの製造が重税によって事実上禁じられた。それでも400か所もの醸造所が密造を続けた。「おらほが丹精込めた酒。どこに出しても恥ずかしくない」。誇らしげな言葉の前に、牧師のお説教も通じなかったという。

 ▼…彼らは、密造が目立たぬよう泥炭を燃料に使い、シェリー樽に酒を隠した。これがスコッチ独特の風味を育てる要因にもなった。一方では皮肉にも、政府公認の大醸造所は、官僚的な規制を受けて品質を落とすばかり。1823年に解禁されるころには相次いで廃業に追い込まれた。

 ▼…ハイランドの醸造所で聞いた話。スコッチが英国の輸出品の柱となったのは「多彩な原酒の存在と、これらを組み合わせるブレンディング技術にあった」。どぶろくの場合は、その土地の食材や暮らし、人々の生き方とどううまくブレンドできるか。特区の実現で今度は、地域文化のあり方が問われることになる。

(24.Feb,2003 梶田博昭)