方言で綴られたマニュアル

 ▼…環境マネジメントシステムの審査員とお話しする機会があった。国際規格のISOの認証取得となると、なかなかに審査が厳しく、取得してからも大変らしい。そういえば、ある自治体の幹部が「ISOを取って多少マチのイメージはアップしたが、職員の間では煩わしいと大不評」と嘆いていたのを思い出した。

 ▼…大分県の複写サービス会社は、品質管理のISO9001の取得に際し、大分弁のマニュアルを作成した。最高責任者は「一番偉れぇしぃ」、「順守しなければならない」は「守らないけん」といった具合だ。社員から「マニュアルは読みやすくないといけんやろう」と提案されたためとか。

 ▼…確かに、環境なり品質なりを一定の水準に保つには、面倒な手順やら決まり事が多い。しかし、審査員氏は「ISOは手かせ足かせではない。独自のアイデアや工夫を生み出すきっかけであり、既成の枠にはまらない企業や事業に成長させる力も秘めている」という。マニュアルにもそんな一面がにじみ出るのだそうだ。

 ▼…そう聞くと、言葉は大切だなと思う。よそ行きでなくて、自分たちの。型どおりでなくて、気持ちを込めた。生きた文言のやりとりには、なるほど、何かプラスアルファをもたらす効果がある。特に方言は、何かを一緒にやるときに、意外な力を発揮するようだ。

(7.Apr,2003 梶田博昭)