はなわの「佐賀」の社会学

 ▼…「県道を走ると一面田んぼだらけ まるで弥生時代」。そんな歌詞が馬鹿受けしているお笑いタレント・はなわのCD「佐賀」。古川康県知事も、プロモーションビデオに登場し「S・A・G・A・サガ〜」とサビのフレーズを繰り返す。渋い顔の県民もいるが、「余裕で笑い飛ばすのが、新しい佐賀」と意に介しない。

 ▼…確かに都会のモノサシで計れば、時代遅れで、非効率で、単調な田舎は笑える。しかし、スピードや効率、量的な充足が絶対的な価値なのか。都会人の心にそんな疑問のかけらがあれば、「クラスの半分以上が同じ床屋、残りの半分はお母さん」という世界は、どこか共鳴する。

 ▼…「出掛ける時にカギをかけるという習慣が佐賀にはない」というのは本当らしい。最近の調査でも、近所付き合いの濃度は全国トップクラスで、人々の信頼とネットワークが地域の安全にもつながっていることがうかがえる。そして、東京などでは今、防犯の砦として近隣関係の再構築を目指している。

 ▼…米国の社会学者ロバート・パットナムらが唱える「ソーシャル・キャピタル」は、そんな信頼や規範で結ばれた人々の絆を基本とする。物的資本や人的資本と並んで豊かな社会を実現するために重要な要素なのだと説く。そこまで折り込んだ歌とすれば、はなわ・佐賀畏るべし。

(7.Jul,2003 梶田博昭)