「釣り人」と「釣り師」の違い

 ▼…雑誌の企画で幻の巨大魚・イトウ釣り師の高木知敬さんと対談した。稚内市立病院の院長で、南極観測隊に2度参加した経験を持つ。イトウの知られざる素顔や、黒船を率いたペリー提督と大魚との奇しき縁、細菌さえ住まない極地の自然など、興味が尽きない。そして、公共工事が野生を追い詰める一因であること。

 ▼…でも、先生も含めて釣り人が一番の脅威では?先生の答は「確かにルールは必要だが、本当の幻にさせないためには、釣り人を閉め出すよりも釣らせることが大事」。魚が増えてるのか減ってるのか、川がどう変化しているのか。釣り人が一番良く見て、良く知ってるからだという。

 ▼…確かに、厳しい規制が希少種の絶滅に拍車をかけた例は少なくない。保護の名の下で蔵にしまい込めば、その価値や存在すら忘れ去られるかも知れない。なるほど、釣り人が環境モニターの役割を果たせばいいんだ。ただの「釣り人」と「釣り師」との違いはここにあったのか。

 ▼…道北の猿払村では、商工会青年部員が中心となって「イトウの里づくり」構想に取り組んでいる。釣りを楽しめる環境を整えることで、地域全体の自然を守りながら、イトウを教育や観光の資源としても活用していこうという発想だ。生命をも拒絶する極限の世界を見てきた釣り師が、彼らをサポートする。

(4.Aug,2003 梶田博昭)